九州大学大学院総合理工学府・先端エネルギー理工学専攻
先端エネルギーシステム開発学講座・エネルギー化学工学教育分野
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片山研はエネルギー化学工学分野の教育と研究を行う九大のまじめな研究室です.
九州大学大学院総合理工学府 総合理工学専攻専攻 II類
プラズマ・量子理工学メジャー エネルギー化学工学教育分野

超臨界CO2研究


超臨界CO2冷却核融合炉
 現在、我が国の核融合原型炉JA-DEMOの設計では、ブランケットで発生する熱を輸送する媒体として、高温高圧水が想定されています.ブランケットを通過する間にある程度の三重水素が一次冷却水中に入り込むことから、熱交換器をを介して二次冷却水を温め、この熱でタービンを回して発電する方式を選択しています.この方式では、加圧水型原子炉の技術を利用することができるため、より信頼性の高い発電システムが構築されることになります.ただし、高温高圧水の温度は300℃程度のため、発電効率は30%程度、熱の有効活用方も限られたものになります.
 一方、核融合科学研究所を中心とした大学では、より先進的な発電方式を想定した研究を続けてきました.ヘリカル型核融合原型炉FFHRでは、一次冷却材として溶融塩FLiNaBeを、二次冷却材として超臨界CO2を想定した設計となっています.溶融塩FLiNaBeの融点は305℃程度であり比較的低温で液体となり、高温加熱下でも水のように高圧の蒸気にはなりません.そのため、水冷却よりも高温での発電システムを設計することが出来ます.高温での発電および熱利用が実現すれば、高効率な電力供給と、熱の利用による核融合炉の多様な利用が可能となります.
 一次冷却材温度(FLiNaBe)温度550℃、二次冷却材温度480℃、圧力20MPaの場合、サイクル熱効率 42.4%となり、水/蒸気水発電やヘリウムガスタービン発電のサイクル熱効率よりも高い値が見込まれています.また、溶融塩はさめにくく熱の利用に使いやすい性質を有しているため、高温熱の有効利用も期待されています.

 FLiNaBeは、リチウムを含むためブランケット通過中に燃料である三重水素が生成されます.また、同じく踏まれるBeは中性子増倍材であるため、高い三重水素生成率が期待されます.このような熱と燃料を同時に生成する方式を、自己冷却ブランケットと呼んでいます.大きな課題の一つは、溶融塩が水素を取り込みにくい性質を有していることです.溶融塩の水素溶解度はとても低くいのですが、このことは溶融塩中に発生した三重水素を外に追い出そうとする力が強いことを意味します.つまり、折角生産した燃料三重水素が輸送過程で配管から外に透過漏洩したり、二次冷却材である超臨界CO2に入り込んだりしてしまうことが懸念されるのです.
 当研究室では、この自己冷却溶融塩-超臨界CO2発電システムにおける一連のトリチウム挙動の解明を目的として研究を続けています.
 

試験設備
 本研究は、核融合科学研究所との共同研究として開始しました.研究所の支援により、放射性物質である三重水素と超臨界CO2が同時に扱える高温高圧試験装置を製作することが出来ました.第2種高圧ガス製造設備として、製作業者様の協力の下、福岡市への届け出も行いました.このような試験装置は、国内では唯一となる貴重なものです.
 400℃の超臨界CO2環境下では、オーステナイト系ステンレス鋼やフェライト系ステンレス鋼は酸化反応が進行し、表面に炭素が生成されることが明らかとなりました.また、超臨界CO2に水素が含まれる場合、生成された炭素との反応によりメタンが生じることもわかりました.このことは、一次冷却系溶融塩から二次冷却系超臨界CO2に三重水素が透過漏洩した場合、三重水素化メタンが生じることを意味します.恐らく三重水素化水蒸気も生じると想定されることから、二次冷却系の放射性三重水素回収システムとして、三重水素(T2)、三重水素化水蒸気(T2O)、三重水素化炭化水素(CT4など)の各化学形に対応可能な設備が必要となります.

左)高圧試験装置の構造        右)グローブボックスに設置した試験装置
 
左)高圧試験装置の写真       右)実験設備(質量分析計QMSやガスクロGC)
 
 
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