本研究室では、未来を支えるエネルギーシステムの開発に積極的に永く取り組んでいます.特に最近では、核融合炉の開発に関する研究に重点を置いています. 『長期的資源確保』『安定供給』『社会的受容性(安全・環境)』などの視点から、核融合炉は将来を担う重要なエネルギー源と考えます.燃料である水素同位体を効率的に製造・回収するための最適なシステムの開発や、核融合炉の安全性に関する研究を行っています. 本研究室の特徴的な点のひとつは、水素の放射性同位体であるトリチウム(三重水素)”を用いた実験を行う点です.1978年九州大学工学部箱崎地区放射性同位元素非密封線源取扱区域内にトリチウム実験室が設置されました.平成25年に工学部RI実験室は理学部RI実験室と統合し、九州大学アイソトープ総合センター伊都地区実験室として運用されています.本研究室は、九州大学にトリチウム実験室が設置されて以来長きに渡って、トリチウムを用いた研究を続けており、トリチウム挙動についての多くの知見を有するとともに、その取り扱いについてもノウハウを蓄積してきました.最近では、トリチウム水を用いた同位体分離やトリチウムベータ線の計測についての教育活動にも参画しています.当施設は、日本原子力学会「原子力歴史構築賞」を受賞しました. 核融合炉の燃料は、水素同位体であるため、研究成果の多くは、水素利用技術へも応用できます.水素は、環境負荷が小さく、クリーンな二次エネルギーとして注目されています.これまで、固体酸化物型燃料電池や固体高分子型燃料電池の研究、水素の貯蔵に関する研究、原子炉の熱を利用した水素製造システムなどの研究を行ってきました.最近では、水素の透過現象を利用した効率的な水素製造法の開発やプラズマを利用した水素抽出法の検討を行っています. |
九州大学工学部トリチウム実験室:トリチウム安全取扱い技術の向上及び核融合炉内外でのトリチウム挙動に関する広範囲な理工学研究の推進に貢献 |
研究室の設備や技術を生かした教育:原子力規制庁人材育成事業に参画し、放射線計測教育にも貢献しました. プレスリリース「放射線計測の専門家を目指して!九州大学で実習」 |
核融合炉などの大規模で複雑なシステムは、いくつかのサブシステムから構成されています. そのサブシステムもいくつかの基本ユニットから構成されています. 私たちは、まず基本ユニットにおける現象解明を目指して、大学研究室において基礎的実験を行います.ここでは、ユニット内での物質移動現象に影響を及ぼすいくつかの素過程に注目し、移動速度や反応容量などをきっちりと定量します.そして個々の現象をモデル化し、独自に得た複数の物質移動パラメータを用いて、ユニット内で生じる一見複雑な物質移動現象の数値シミュレーションを可能にします. 個々の現象の組み合わせとしてシミュレーションすることで、システム設計を具体化できるだけでなく、それまでに見えてこなかった設計上、運営上の問題が明らかになることもあります.基礎現象をしっかりと理解して初めて、大規模システムで観測される現象のメカニズムが見えてくるのです.そのため、研究室で行う実験では、基礎現象を理解することに力を入れています.ここで大事なことは、システム全体として見た場合の、その注目現象の持つ意味をきちんと理解することです. |
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当研究室は、共同研究にも積極的に取り組み、国際的なプロジェクトにも参画しています.過去、現在に共同研究を実施した研究機関・大学を以下に示します. | |
・日米国際共同研究事業JUPITER-II, TITAN, PHENIX ,FRONTIER (米国アイダホ国立研究所に派遣され研究を実施しました.) ・日中韓フォーサイト事業(中国プラズマ物理研究所など) ・量子科学技術研究開発機構(QST) ・自然科学研究機構 核融合科学研究所(NIFS) ・日本原子力研究開発機構(JAEA) ・九州大学応用力学研究所 ・富山大学研究推進機構水素同位体科学研究センター ・株式会社MOSTECH |